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多汗症と麻痺、痙攣、その他

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多汗症とは

・ひどく暑いわけでもなく、また激しい運動をしたわけでもないのに、緊張したときなどにぐっしょりと汗をかくのが「多汗症」。
・中でも我々が治療をしているのは、「局所多汗症」といって手のひら、足の裏、腋、顔面など、特定の部位の発汗が多い患者さん。
・特に多いのは手のひらと足の裏の多汗症で、「手掌足底(しゅしょうそくてい)多汗症」と呼ばれるもの。
・一般に言う「汗かき」というレベルではなく、手のひらの場合ひどい場合にはポタポタと滴り落ちる。字を書こうとしても紙を濡らしてしまい、破いてしまうので、テストが受けられない、ノートがとれないという人も多い。
・しかし、多汗症が病気であるという認識ができたのは最近のことで、これまで多汗症の患者さんの多くは、受診しても「気の持ちようです」「気のせいです」などと言われるだけだった。
これまでに下は8歳から、上は78歳までの多汗症の患者さんを手術した。つまり、年齢に関係なく、多汗症で苦しんでいる人は多い。

汗のメカニズムについて

・汗には、大きく分けて暑いときに体温調節をするための「温熱性発汗」と、精神的な緊張によっておこる「精神性発汗」とがある。
・手のひらと足の裏にかく汗は、「精神性発汗」。
・なぜ、緊張すると汗をかくのかというと、ひとつ考えられるのは、我々の祖先は手袋も靴もない状態で狩りをしていた。そういうときに手のひらが乾いていたら、矢はスルッと滑ってしまう。また、足の裏が乾いていたら、岩の上を走るときに滑って走れない。
・だから「これからマンモスを捕るぞ」という緊張する時には、手のひらと足の裏が湿って、うまく狩りができるようになった・・・ということ。
・「精神性発汗」は、外からの緊張だけではない。熱中して本を読んでいるようなときにも汗が出る。心が緊張して、ドキドキすると発汗する。
・「手掌足底多汗症」の患者さんは、緊張すると交感神経が強く働く。
・通常の人でもそういった精神的な活動が高まると汗が出るが、「手掌足底多汗症」の患者さんたちは、それほど刺激が強くなくても汗が出る。だから、日常生活が大変困る。

多汗症について

・多汗症は、精神的な病気ではない。
・多汗症の人は、乳幼児期にはすでに手のひら・足の裏が汗ばんでいるなどの症状が現れており、物心がついた時にはすでに自分は多汗症だったという人がほとんど。
・小さい頃手をつないで歩くのがたいへんだったとか、赤ちゃんのときに靴下を履かせるのが大変だったということを、後になって母親から聞かされたという人もいる。
・このように、自我が芽生える前から多汗症であったということからも、多汗症が性格的・意識的な問題から生じる病気ではないということがわかる。

グレードについて

・同じ多汗症でも、人によって汗の量が違う。
・特に手のひらの多汗症に関しては、治療の目安として発汗のグレードを三つに分けている。

グレード1

湿っている程度。見た目にはわかりにくいが、触ると汗ばんでいることがわかる。水滴ができるほどではないが、光を反射して汗がキラキラと光っている。

グレード2

水滴ができているのが見た目にもはっきりとわかる。濡れている状態。だが汗が流れるところまではいかない。

グレード3

水滴ができて、汗がしたたり落ちる。

治療の変遷について

・多汗症の原因は交感神経の働きが良すぎることなので、その働きを抑えない限り汗は止まらない。
・だから、今まで治療法がなかった時代には、多汗症の患者さんたちは死ぬまでガマンをするしかなかった。
・それが気にならない人もいるが、かなりの人が困っている。特に西洋では握手の習慣があるので、それで困る人たちがたくさんいた。
・だからヨーロッパのあたりでは、昔から腕を大きく開き、神経も大きく切るという外科的な治療が行われていたが、日本ではそこまでやっていなかった。
・しかし、今から20年ほど前。我々のところで、レントゲンで見ながら深いところまで針を刺して、交感神経を遮断するという治療法を開発した。
・これはもともと、「痛み」の治療のために開発された方法だったのだが、手のひらの汗が止まるということが偶然にわかり、多汗症で困っている患者さんがそれを聞きつけて来るようになった。
・しかし、その神経ブロックはやはり、体の深いところに針を刺さなければいけないし、レントゲンで見ながら針を刺すのは非常に手間がかかった。それに、多汗症の治療としての成功率は70%くらいだった。

最新の胸部交感神経遮断術について

・1994年から行っている方法で、「内視鏡下交感神経切離術」という。
・わきの下に3~4mmほどの小さな穴を開け、そこから内視鏡を入れてテレビカメラで観ながら交感神経を切る。
・胸は「胸郭」というように、肋骨がうまい具合にカゴのようなものを作っている。そのカゴの中に「肺」がある。肺は風船みたいなもので、空気で膨らんでいるので、押せばへこむ。
・だから、腋の下に小さな穴を開けて、そこから炭酸ガスを少し入れ、炭酸ガスで肺を押して小さくしながら、電気メスで交感神経を切る。
・右の手術が終わると炭酸ガスを抜いて肺を元の大きさに戻して閉じる。そして今度は左側を同じように手術する。
・全身麻酔で行い、所要時間は片側に30分、全部で1時間。
・外来でも手術可能だが、全身麻酔ということもあるので、我々の病院では通常二泊してもらい、入院した翌日に手術をし、翌日に退院する。
1994年ごろは胸の第2第3神経を切除していたが、現在では代償性発汗を少なくするために第3または第4、ときには第5神経を切除している。

その他の効果について

・胸の神経は12本あり、そのうちの二番目が手にいっている交感神経。この神経は顔にもいっているので、ここを切断すると顔の汗も止まる。
・また、二番目の神経は心臓にもいっているので、心臓の動きも少しゆっくりになり、いわゆる「アガリ症」「赤面症」も治ることがわかった。
・顔が赤くなる「赤面症」にはこれまでずっと治療法がなかったが、二番目の神経を切ると治るということが、患者さんの中に多汗症でなおかつ偶然、赤面症の人がいてわかった。
・そういうことがあったので、現在はこの手術を「赤面症」の治療にも行っていて、保険も適用されている。
・赤面症の人は「社会恐怖」といって、人と会うことを恐れ、それを避けるようになる。家にこもったような生活をしている人もいる。
・そういう人が手術によって自信を取り戻し、社会生活が普通にできるようになる。

代償性発汗について

・交感神経は筋肉も知覚も支配しないので、交感神経を切ることによって、体の動きがおかしくなるとか、知覚がおかしくなることはない。
・ただ、この治療はある部分の汗を止めてしまう。手のひらだけでなく、顔の汗も首の汗も胸の汗も止まる。
・ということは、その部分の温熱性発汗がなくなるために、他の部分で温熱性発汗を行うことになる。これを「代償性発汗」という。
・顔や首は露出しているところだから、汗が出ても蒸発してくれるが、後の部分は服を着ている部分で外には出ていないので、代償性発汗の汗は湿気となって水となり、ビチョビチョになる。
・これは必ずある副作用で、この手術の唯一の欠点。
・だから、代償性発汗のことをよく考えて、手術をするかどうか決めてもらうことが大切。
・また、手術をした場合は、代償性発汗の対策も必要になる。そういったことも含め、代償性発汗についてもよく説明してくれる病院を選んでほしい。

再発について

・我々は1700人に左右療法で3400回くらい手術をしているが、その中で再発したのは20人くらい。
・再発率はそれでいくと少ないが、手術が1994年からだから、まだ8年。もっと何十年も経たないとその先はわからない。
・多汗症の治療は、代償性発汗や、再発の可能性も含めて、患者と病院側がよく話し合い、検討することが大切。
・我々のところでは、臨床心理士がおり、よくカウンセリングをして生活への支障や精神的な面も評価して、手術をするかどうか決めている。

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